なんというか、中学校教員を退職して半年ですが、はじめて退職しちゃったことを少し後悔しました。それくらい、まだまだ「公立中学校でできること」はあるよなぁ、と再確認。同時に、国語教師っていいなぁ、と思いました。
この本は北海道の公立中学校で長年教壇に立たれていた石川先生が、雑誌に連載していたものを再構成したものです。連載時のタイトルは「公立中学校でしなやかに生きること」でした。元々は、亘理センセが紹介してくれていた新刊が気になってたんですが、どうやらその前編に当たる本があるというのを知って、こっちを先に買いました。
石川先生のお名前は、いろいろなところで見かけていたものの、文章を読むのは実は初めて。文章そのものが「しなやか」で、流れるようなんだけど、あちこちで引っかかる何かがある。子どもを見つめるまなざしがどこまでも優しいんだけど、生徒に寄り過ぎていない(暑苦しくない)絶妙なバランス。ああ、ぼくの目指していたところだなぁ。ふだんは読むのが遅い私も、長い通勤時間を使って一気に読み終えてしまいました。
私も、公立の中学校の中で、ずっと違和感を抱えながら仕事をしてきて、その違和感を自分なりに別の新しい形にしていくことが自分のライフワークだったのだと思います。でも、それをさらに「しなやか」にそして「したたか」に実現している石川先生の実践に心打たれました。もちろん、その裏にいろんな葛藤があって、泥臭いやりとりがあって、いろんなことが成立しているんだけど、それがどれだけ大変かが想像できるので、本当にすごいなぁと思うのです。
自分は、いち担任としてやっていた頃は、本当に自分の好きなようにやらせてっもらってたのですが(その頃に石川実践とか岩瀬実践とかを学びたかった!)、学年主任等になってからは中途半端にバランスとか公平性みたいなものを変に意識し過ぎてしまい、思い切ったことができない自分に歯がゆさを感じていました。だからこそ、石川先生の「それらすべてを含めて仕事というんだよ」という言葉に頭をガツンと殴られました。ああ、ぼくは十分に闘ってなかったんだな、って。
そういう意味で、この本にあと5年早く出会っていたら、今の自分はまた違った人生を歩んでいたかもしれません。それくらい個人的には衝撃を受けた一冊でした。
「選択教科」とか「雑談」とか、共感できるお話もいっぱいなのですが、それ以上に「そうか、その先にはこんな景色が広がっていたのか」と感じることができるエピソードがたくさんあります。この「エピソードの力」は、私も2冊の本を書きながらずっと感じていたことで、いまだにブログに綴ろうとしている理由でもありますので、さまざまなエピソードの中に「全体」と「個」が見えてくる文章に感銘を受けます。
成長する英語教師をめざして―新人教師・学生時代に読んでおきたい教師の語り
- 作者: 柳瀬陽介,組田幸一郎,奥住桂
- 出版社/メーカー: ひつじ書房
- 発売日: 2011/08/17
- メディア: 単行本
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石川先生にとって学級通信がそうであったように、この本も「誰か」に向けて個別に書かれたんじゃないかな、と思ってしまいます。そして、それは多くの教師の中の「今の自分」のために書かれたんじゃないか、と思えてしまうところに、この本のすごさがあるし、個人的なライフステージも含めて「今の私」がたまたまそれを受け取れるフェーズにあったんだろうなという偶然にも感謝をしたいです。
最新刊も買ってあるので、読むのが楽しみなんですが、一気に読んでしまうのはなんかもったいないので、別の本を挟んでから読もうかな(笑)