新学習指導要領における「思考・判断・表現」の評価を考える

 少し前にポッドキャストの方で一人がたりした内容をブログ記事にしておきます。

 新学習指導要領の施行にともない、新たに3つの評価の観点に切り替わります。その中で、一番頭を悩ませそうなのが、「思考・判断・表現」です。でも、意外とこの枠組が、今までの評価基準が抱えてた問題点を解決する緒になるのでは、と最近考え始めています。

 現行の学習指導要領に紐付けられた評価の観点の中で一番モヤッとするのは、「外国語表現の能力」の中の「適切さ」の扱いです。これまでにも何度かこのブログで私なりの解釈を試みていますが、いつも行き止まりにぶつかっていました。

 具体的に「話すこと」における「適切な発話」の項には、こんな記載があります。

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 「尋ねられたことに対して適切に応じる」というのは、割と初歩的な段階のアクションですが、「場面や状況にふさわしい表現を用いて話す」なんてのは、いろんな語彙や表現を知っていないとできないわけで、結構高等なアクションにも感じます。このように、「適切さ」って「すごく初歩的なもの」と「すごく高等なもの」の組み合わせのように感じて悩ましく感じていました。

 もうひとつのポイントは、現行の評価の枠組みでは、複数の観点にまたがる「統合的な活動」を評価するのが難しかったのです。

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 例えば、与えられた英文の手紙を「読んで」、それに対して返事を「書く」という活動をするとしたら、それは「読むこと」と「書くこと」のどちらの観点で評価すればいいんだ?ということになります。なので、「書くこと」で評価するために、「読むこと」の負荷が大きくならないように簡単な英文を選んだり、適切なフォローをしたり、と配慮が必要でした。「統合的な活動」に取り組め、という割には、学習指導要領的には不自由が多い感じでした。

 さて、こういった問題が、今回の「思考・判断・表現」という新観点によって、解決するのではないか、と思っています。

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 新学習指導要領解説の定義を読んでいると、「思考・判断・表現」って、これまででいう「適切さ」と「統合的な活動」がカバーされているように思うんです。とすれば、旧→新を比較してみると、こんなふうに推移していると考えることができます。

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 ああ、これなら割とすっきりする。もちろんピンクの部分には、これまで位置づけられてなかった「統合的な活動」が加味されています。

 そうなると、「思考・判断・表現」という観点では、今学習したばかりの項目というより、既習事項をどれだけスムーズに使えるか、が問われることになるのではないかと思います。だって、今練習してる文法項目を「適切に」なんて使えるわけないし。

 個人的には、これが3つめのポイントで、これまでの学校における評価って、「今やってること」に偏りすぎてたように思うんです。不定詞を教えて、不定詞使えるか(不定詞の形知ってるか)テストして、みたいなのって、言語習得のプロセスを考えると無理があると思うんです。「外国語表現の能力」あたりを既習項目の定着の場所として使ってくれてた先生方はいたと思うけど、そんなに多くないかも知れない。

 そう思うと、今回の「思考・判断・表現」という新しい枠組みがそういう場所になればいいな、と思うんです。で、そうであるなら、それが評価全体の三分の一を占めることにも個人的には納得できます。(10月末の時点では納得してなかったんですけどね) これまで塾で先取りして練習してきた子とかが中間テストとかで点数を取って、でもすぐに忘れちゃって、使えるようにはならなかった、みたいなことが少しでも減ることになるんじゃないかと期待しています。

 とはいえ、これは完全に私の勝手な解釈。11月中に公表されると噂されてて、その後音沙汰ない文科省(国立教育政策研究所?)からの発表が、これと全然違ったらまぁ笑い話ということで。もしくは、強引にそんなふうに解釈して、実践を積み上げてくださる先生が増えたりしたら面白いな、なんて勝手に思っています。